「Made in Suzuka」
気づけば8月最終日、三重バイオレットアリスの監督になってから4ヶ月が経過しました。
5月の社会人選手権を終えて、大会後に改めてこのチームの現状把握し、重要課題について考えてみました。その重要課題の一つが「栄養補給」「からだ作り」などのフィジカル的な部分でした。
「世界に目を向けよう」「日本一を目指そう」「パーソナリティを高めていこう」とメンタル的な部分は監督に就任してから選手にも、クラブに関わる人たちにも事ある毎に伝えてきました。「こういうハンドボールを展開していこう」という技術的、戦術的な部分に関しても社会人選手権前からそんなに変わっていません。
所謂「心技体」の「心」と「技」の部分は社会人選手権前から少しずつアプローチしてきて現在も継続しています。「体」の部分ですが、チームに合流してから、選手に「ここは社会人選手権後にじっくりと取り組んでいく、今はこれまで自分達がやってきたやり方を継続してもらっていいよ」と伝えてありました。
大会終了後の6月からウエイトトレーニングのフォーム作りに着手。最初は自重からのスタートでした。少しずつ重量を上げていき、3週間程かけて正しいフォームを身につけてもらいました。6月28日から1サイクル目の第一週がスタートしそこから5週間かけて、ウエイトトレーニングの重量を上げていきました。同様に、クレイジーラン、ジャンプ、クイックランなども8月15、16日の国体予選に向けてトレーニング強度を上げていきました。トレーニング導入前と導入後(国体予選直前)とでフィールドテスト、形態測定を実施しました。
フォーム固めを行い、トレーニング頻度を保ち、トレーニング強度を少しずつ上げていく、大会前に過去最強の自分になる。しかも狙って。測定結果が数字で出てくるので、自分の成長を目に見える形で実感できます。
「体」についてのトレーニングとその評価に関して上記のような形で実施しました。
これらのフィジカルトレーニングに加えて、「栄養補給」という観点から、専門家に協力してもらってきました。まずは選手全員の食事調査を栄養士に依頼しました。鈴鹿大学短期学部の栄養士の先生と研究室の学生さんに、選手の食事内容を調査し改善案を出してもらいました。
経済的にもあまり負担なく、簡単に必要な栄養素をとることの出来る料理のレシピを教えてくれたり、食材の組み合わせを教えてくれたりと、なんならアスリートとしてだけでなく、女子力まで上げてもらっちゃっています。しかし、毎日毎日練習後に自炊ってのは体力的にも、精神的にも結構な負担…
選手達も、身体作り&食事の大切さは理解しているのですが、フルタイムで仕事をして、夜の練習が終わって、帰宅してとなると、なかなか最高のタイミング&内容で食事をとることが難しい。トレーニング直後の30分以内がリカバリーのゴールデンタイムなのに、栄養補給が出来ていない、このままでは改善されることはない、ここが課題でした。
何とか練習直後に栄養補給を出来る環境を作ってあげたいなぁと。選手の身体に入るものは、安全で安心な食材がいいなぁと。じゃあどうするかなと。あれやこれやと考えていた時に選手に「おふくろさん弁当は手作りですよ。しかも美味しいです。」と教えてもらいました。
縁があって、おふくろさん弁当の社長さんにチームの目標や現状、そして社会人選手権以降の取り組みについて説明する機会を頂きました。まずは7月中、週2回を目安としてテスト的におふくろさん弁当を導入しました。栄養満点のおかずメニューを作ってくださいました。白いご飯は選手が自宅で炊いておきます。これで練習直後のゴールデンタイムに栄養補給が可能になりました。お弁当の内容についても、選手からの希望や栄養士からのアドバイスも盛り込み、毎回アレンジしてくださいました。
このおふくろさん弁当の食材は地元の農場・鈴鹿ファームでとれた野菜ばかりです。僕と同世代くらいの農家の方が心を込めて野菜を育てて、収穫してくれています。その鈴鹿産の野菜を、栄養士のアドバイスの元、おふくろさん弁当が手作りで料理して、選手は練習直後に食べる。
食事とは「人を良くする事」と書きます。
鈴鹿の土で育ち、鈴鹿で収穫された食材を、鈴鹿の栄養士&学生がアドバイスをして、鈴鹿の手作りお弁当屋さんが料理して、鈴鹿を拠点に頑張っている選手がその手作りお弁当を食べて身体作りをする。そして鈴鹿から日本一、世界を目指している。
この取組みに関わってくださっている方には、クラブの理念や目標を何度もお話させて頂きました。
「自分達が関わったもの(育てた野菜、作った料理)が選手の身体に入って、日本一を一緒に目指せると思うとワクワクしますね。」と鈴鹿ファーム&おふくろさん弁当の皆さん。
「これまで何となく、栄養士になる勉強をしてきたけど、トップチームの栄養プログラムに関わる事が出来るなんて…もっと真剣というか本気で色々と考えてみたくなりました。」と栄養士の卵の学生。
「学生達の目の色が変わってきました。アルバイトを少し減らしてでも、バイオレットの選手達と色々やってみたいと話してくれる子が出てきましたよ」と栄養士の先生。
鈴鹿の皆さんとのこの取組みを選手&クラブに経済的に負担をかけずに継続し、応援して下さる方にもメリットを還元できるように、成果で応えられるように!!!
選手には「もう自分一人だけじゃ身体じゃないよな。コートに立つ為に何人の人が関わっているから考えてみよう」と話しています。
そして身体作り&栄養に関する取組みを自分達の中だけにとどめるのではなく、三重県内のスポーツをしている子供達&親御さんにも知ってもらいたいと考えています。スポーツ系のフリーペーパー「Lets」で選手達が、この取組みを毎月紹介していますよ。
年一回のクリーン活動だとか、年一回のハンドボール教室だとか、そういうのも必要なのかもしれません。しかし実施すること自体が目的になってしまっていないだろうか?とずっと疑問に感じてきました。地域密着とか地域貢献とかこのご時世何処でも耳にするし、目に触れますよね。
もっと本質的な部分で「地域と共に活動する。地域と共に日本一、世界を目指す。」というのはこういう事じゃないのかなと思っています。
三重バイオレットアイリスは三重県鈴鹿市を拠点に活動するクラブチームです。そして三重バイオレットアイリスは「Made in Suzuka」です。
そしてそして今回のこの取組み自体を鈴鹿マガジン9月号で、特集していただきました。
しかもラジオ出演します。9月5日(土)、9月12日(土)、9月19日(土)の3回、それぞれ17時から鈴鹿voiceFM 78.3MHzの「ハンドボールガールズ」で放送予定ですよ。
そうそう国体東海予選の一週間前にフィールドテスト&形態測定を実施しましたが、筋力量&除脂肪体重が上がっている選手、遠くに跳べて、速く走る事ができるようになっている選手が殆どでした。国体東海予選の結果は先日御伝えした通りです。現在は和歌山国体に向けて2サイクル目に突入しています。